溶連菌感染症

溶連菌感染症について

溶連菌 :のどや皮膚に炎症を起こす細菌で、正式名称は「A群β溶血性連鎖球菌 」、略して「溶連菌」と呼ばれています。溶連菌は毒性が高く、①ヒトの組織を直接破壊する、②免疫に不具合を生じさせる、③毒素を産生する、などの方法で様々な病気を引き起こします。特に小児科では溶連菌による「咽頭扁桃炎」の診断治療、続発する「リウマチ熱」の予防、「急性糸球体腎炎」の検査が重要です。他にも、伝染性膿痂疹、壊死性筋膜炎、毒性性ショック症候群、猩紅熱などの病気の原因となります。

【症状】

溶連菌がのどに感染すると、発熱やのどの痛みが起こり、翌日以降に発疹(紅斑)、いちご舌、首のリンパ節の腫れ、吐き気などが現れます。咳や鼻水がほとんどみられないことが特徴です。発症初期には頭痛や腹痛、嘔吐を伴うこともあります。多くの患者さんで、のどに「燃えるような」赤みや出血斑がみられます。一部の患者さんでは細かな赤い発疹が全身広範囲に拡大し、猩紅熱という病態を呈することもあります。急性期を過ぎると指先に落屑(皮むけ)がみられます。

【感染様式】

溶連菌による咽頭炎は3~13歳児に多い病気で、年間を通じて流行がみられます。おもな感染経路は咳やくしゃみに曝露したことによる「飛沫感染」で、唾液や飛沫などが手指を介して感染する「接触感染」も起こります。

【治療】

抗菌薬(抗生物質)が有効であり、標準的には10日間、短期療法では5日間の処方を必ず最後まで飲みきって下さい。症状は最初の1~2日で消えますが、途中で内服を止めると溶連菌が除菌できず再発するおそれがあります。幼稚園や学校で昼食時に薬を飲めないときは、帰宅後すぐに飲んでも有効です。

【感染予防のポイント】

抗菌薬治療を開始してから24時間が経過するまでは他の人に感染しますので、外出や友達と接触するのは控えて下さい。家族にも感染するので、1~5日間程度は熱やのどの痛みに注意して下さい。兄弟間での感染は約25%と報告されています。特に症状がない家族の方については、予防的に抗菌薬を内服する必要はありません。ただし、心臓や肺、腎臓、免疫機能などの疾患を持つ家族がいる場合は予防的内服を行うことがあります。

溶連菌はしばしば再発、再感染を起こします。原因として、①前回とは異なる抗原型の溶連菌である場合、②前回の治療(除菌)が不十分だった場合、③家族内や学校・幼保育園に保菌者がいる場合が考えられます。

【リウマチ熱】

溶連菌感染から1〜3週間後にリウマチ熱を併発して心臓の後遺症(弁膜症)を起こすことがありますが、上記の抗菌薬治療を完了することでほぼ100%、発症を予防することが出来ます。20-30年前にはリウマチ熱は小児科の日常診療でよく見掛けられましたが、現在では疾患の存在が広く認知され、社会環境が整ったことや早期の検査と治療が行われるようになったため、リウマチ熱は非常に珍しくなりました。

【急性糸球体腎炎】

①血尿、②浮腫、③高血圧が3大症状で、溶連菌感染から1〜6週間後に発症することがあります。突然、コーラ色の尿(血尿)が出始めたり、顔や体が腫れて元気が無くなったり、腹痛を訴えたりするために気付かれます。溶連菌により免疫反応に不具合が生じ、腎臓で正常に尿を作れなくなっていることが原因です。リウマチ熱と異なり、溶連菌による糸球体腎炎は抗菌薬治療で予防することはできないとされています。程度によって入院することがありますが、基本的には予後良好な疾患です。

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