定期接種対象者: 小学6年生〜高校1年生の女子
標準的な接種年齢: 中学1年生 

【子宮頸がんについて】
日本では毎年9000人以上の女性が子宮頸がんにかかり、約2500人が死亡しています。若年層(25歳から44歳)での発症が最も多く、まだ子どもが小さい時にお母さんが亡くなることもある、怖いがんです。

子宮頸がんの発症にはヒトパピローマウイルス(HPV)と呼ばれるウイルスが大きく関係しており、思春期以降、男女を問わずほとんどの人が1回または複数回、HPVに感染しています。感染しても、ほとんどの人は知らない間にウイルスが消えてしまいますが、一部の方で子宮頸部に前がん病変が生じ、ゆっくり進行して本当のがんに変化します。最終的に浸潤がんになるのは約0.1%(1/1000)ですが、もともと非常に多くの人がHPVに感染しているため、結果的に年間9000人以上の方が子宮頸がんを発症しているのが現実です。早期であれば子宮の一部を切除して治療することができますが、それでも将来の妊娠・出産に影響が出る可能性があります。


一方、浸潤がんに対しては子宮や卵巣を全て摘出したうえで放射線治療・抗がん剤治療を受ける必要があり、妊娠・出産だけでなく生命の危険や後遺症が生じる恐れがあります。 そのため、子宮頸がんワクチンによるがん予防が世界中で進められていますが、日本では積極的な接種勧奨を中止しているため接種希望者はごくわずかであり、このままでは子宮頸がんの予防は期待できません。

【子宮頸がん予防ワクチンの有効性について】
子宮頸がんはワクチンで予防できる唯一のがんであり、確固とした有効性があることが科学的に証明されています。2016年時点で子宮頸がんワクチンは世界65ヵ国で国の予防接種プログラムとして接種されており、米国・豪州・イギリス・北欧などの国々では接種導入後の4年間で前がん病変の発生率が50%減少したこと、フィンランドでは浸潤がんの発生が0.001%未満(1/100,000未満)になったことが報告されています。

【子宮頸がんワクチンの安全性について】
世界保健機関(WHO)では、子宮頸がんワクチンを国の接種プログラムに導入すべきと繰り返し推奨しています。ワクチンの安全性については、WHOの専門委員会が世界中のデータを解析し、最新の報告でもワクチン接種者に有意に頻度の高い重篤な有害事象は見つかりませんでした。日本でも多くの解析が慎重に行われてきましたが、当該症状とワクチン接種との因果関係を証明するような科学的・医学的根拠は全く示されていません。名古屋市における疫学調査でも、ワクチン接種後に報告された多様な症状とワクチン接種の間に関連を認めないことが報告されています。これらの調査の結果から、「日本小児科学会」「日本産婦人科学会」「日本感染症学会」など主要な医学会では、極めて憂慮すべき事態として子宮頸がんワクチンの接種勧奨を再開するよう厚生労働省へ要望を提出しています。

【当院では子宮頸がんワクチンの接種を推奨します】
以上のような医学的根拠が示されているにも関わらず、日本では副反応ばかりがヒステリックに報じられ、一般の保護者や中高生本人には正しい情報が届いていません。子宮頸がんは命に関わる病気です。かけがえのない子供たちの健康や未来を守るためには、接種のリスクと子宮頸がんにかかることのリスクを比較して冷静に判断することが必要です。現在、日本中の小児科医・産婦人科医はこの状況を改善すべく、地道に患者さんへの説明を行なっています。当院でも、将来、女の子たちが子宮頸がんで子宮を失ったり、命を落としたりするような悲しい事が起きないよう、十分な説明を聞いて理解されたうえで子宮頸がんワクチンの接種を受けることをお勧めします。どうぞ医師、看護師の話を聞いていただければと思います。
ワクチンの接種は決して強制ではありません。接種を前向きな方、否定的な方、それぞれの立場から子供たちの健康のために最善を尽くしていただければ望外の喜びです。


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